「重要事項説明」と注意点について
「重要事項説明」とは
そもそも「重要事項説明」とは、宅地建物取引業法で定められている宅地建物取引業者(以下宅建業者)に課された義務であり、宅地建物取引(不動産の売買など)においては売買契約前に必ず行わなければなりません。そのため、宅建業者が売主になる新築不動産の売買はもちろん、個人間の取引以外では、仲介する宅建業者は、必ず重要事項説明を行います。
また、重要事項説明は宅地建物取引士(以下:宅建士)の独占業務ですので、不動産会社に勤務していても宅建士の資格を有していないと行えません。ですから、説明の際は宅地建物取引士証の提示が義務付けられています。
重要事項説明は「重要事項説明書」に基づいて行われます。同書面には主に以下の項目が記載されています。
【対象となる不動産に直接関係する事項】
対象となる不動産に直接関係する事項とは以下の通りです。
・登記に記録された事項(権利の種類・内容など)
・法令に基づく制限(用途地域の指定ほか建築にかかる各種制限など)
・接道状況について
・私道負担に関する事項(私道がある場合)
・電気やガス、水道などのインフラについて
・工事完了時における形状・構造について(未完成物件のみ)
・その土地に対する注意事項(土砂災害警戒区域内かなど)
・アスベスト(石綿)使用の調査有無や耐震診断の内容
このように、物件やその土地に関して知っておくべき事項が記載されています。
【取引条件に関する事項】
取引条件に関する事項とは以下のような項目です。
・代金、交換差金以外に授受される金額など(手付金などの明示)
・契約解除に関すること
・損害賠償額の予定、違約金について
・手付金・預り金の保全措置について
・金銭の貸借のあっせんについて(融資内容)
・契約不適合責任について
ここでは、金銭授受の取り決めや契約解除についての具体的な内容などが記載されています。
【その他の事項】
その他の事項には、
・不動産会社の営業保証金の供託所名など
・添付書類の一覧(土地・建物登記簿謄本、公図など)
が記載されています。
【区分所有建物の場合の説明事項】
マンションなどの区分所有建物には、土地・土地付建物にはない特有の説明項目があります。
・敷地の権利や内容
・共用部分に関する規約等の定め
・専有部分の用途や利用制限に関する規約等の定め
・専用使用権に関する規約等の定め
・所有者が負担すべき費用を特定の者にのみ減免する旨の規約等の定め
・修繕積立金・管理費について
・管理委託先について
・建物の維持・修繕の実施状況記録
マンションなどの区分所有建物は専有部分と共用部分が存在し、さらに専用使用権の取り決めがあります。これらの利用制限や管理・維持に関する細かな決め事が管理規約により定められており、そのおおよその内容について記載があります。
重要事項説明書の注意点
「重要事項」というくらいなので、重要事項説明書の内容は全て重要ですが、いかに細かな注意点を記しますので、実際に重要事項説明を受けるときの参考にしてください。
【物件に関すること】
まず、「不動産の表示」の土地・および建物の表記について、土地の表記部分に「登記簿面積」と「実測面積」の項目があります。この二つは数値が異なっていることがあります。自身の取引が「登記簿売買」なのか「実測売買」なのかを正しく把握しておき、取引面積の認識が合っているかを確認しましょう。また、建物についても、増改築が行われている場合は表記の建物面積と現状が異なっていることがあります。その分は「固定資産税課税台帳」などで確認します。
また、「所有権に係る権利に関する事項」の記載にも注意が必要です。「無」になっていれば問題ありませんが、「有」になっていたら、その内容を必ず確認しましょう。認識のない登記記録がある場合、購入しても所有権を取得できないということになりかねません。
接道についても注意が必要です。購入する物件の前面道路が私道の場合、記載内容に注意しましょう。まず私道負担の有無はどうか。私道負担があるならば、その分の面積や持ち分などが記されます。セットバックを要する場合は、建物の敷地として使える面積がその分減ります。ただ私道の所有権が全くない場合は、インフラ敷設工事の際に所有者の許可が必要になり、通行料がかかることもあるので、いずれもきちんと確認しましょう。
【金銭に関すること】
まず、手付金とその取扱いについてです。手付金とは、売買契約前に売主へ預け入れる金銭であり、決済時には売買代金の一部として充当されるものです。ただし、契約が解除されたときに手付金の取扱いはどうなるのかは解除に至った理由により異なります。重要事項説明書にはそのことが細かく記載されているので、確認しておきましょう。
また、マンションを購入するのであれば、売買代金以外にかかる費用の記載を確認します。例えば、駐車場や駐輪場、専用庭などの共用部分での専用使用権に費用を要する場合には、取得権利と金額の認識にズレがないかを必ず見ましょう。
また中古マンションを購入する場合は、管理費・修繕積立金の欄に前所有者による滞納分の記載がないかを確認します。管理組合は特別な取り決めがなければ、前所有者の滞納分を新所有者に請求できるので、この有無の確認は大切です。
【立地や建物のリスクに関すること】
表記項目としては、「造成宅地防災区域」内か否かと、「土砂災害警戒区域」内か否かになります。
いずれも「区域外」ならば問題ありません。もしも「区域内」である場合には、災害リスクと災害を防止するための措置を講ずる責任が生じることを理解した上で、不動産を購入しなければいけません。
また、アスベスト(石綿)の使用調査の有無や耐震診断についての記載も安全・安心に暮らすための重要なポイントなので、必ずチェックしましょう。
【特約に関すること】
「特約」とは文字通り、特別な規定をもって約することです。通常の記載項目以外に特約が記されている場合は、必ず確認しましょう。特約の例としては、「契約不適合責任の売主の免責特約」、「住宅ローン特約」、「買換え特約」などがあります。
「契約不適合責任の売主の免責特約」は、通常、法令で定められた売主が負うべき取引対象に対する契約不適合責任について、負わないものとする規定です。築年数がかなり経っている中古物件に見られます。建物状況調査結果と合わせて規定されることが多いですが、不明な点があれば説明を求めましょう。
「住宅ローン特約」は、もしも住宅ローンの本審査に通らず融資を受けられなかった場合には、売買契約は解除され、預け入れた金銭は全額買主に返還されるという取り決めです。
「買換え特約」は、同じように規定期日までに規定金額で手持ち物件が売却できなかった場合に売買契約が解除されるというものです。特約によって買主が有利になるもの、不利になるものがあるので、曖昧に承認しないように注意しましょう。
気になる箇所は残さない
重要事項説明を受けた後は、「重要事項説明受領書」という書面に署名・捺印をし、重要事項説明書の控えを受け取ります。これで、「重要事項説明をきちんと受け、内容に納得しました」という証明になります。そのため、受領書に署名・捺印した後に、重要事項説明に関することを理由に売買契約を白紙解約することはできません。
この状態で契約解除をすると、買主側の自己都合の契約解除になる可能性が高いので、そうなると契約時に預け入れた手付金は違約金として没収されてしまいます。
また、重要事項説明をする宅地建物取引士はわかりやすく説明するように心がけていますが、はじめて不動産を購入する人には理解しにくい点も多いです。ですから、重要事項説明で少しでも気になる箇所があれば、受領書に署名する前に、遠慮せずにどんどん質問しましょう。
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